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性用占精術 秘密のセックス鑑定
第11章 アクエリアスの女 変革の章
 ポストに葉書が入っている。『出射若菜 写真展 世界の木々』
 別れた恋人、若菜の個展が開かれるようだ。彼女の事を想うとまだ切ないが、純粋に活躍が知りたくなり個展を訪れることに決めた。
会場も県内で、車で一時間程度のところだ。開催日時を確認し葉書をデスクの引き出しにしまった。


 こじんまりとした会場だが、老舗のギャラリーで地方にしては著名人が好んで展示会を開いている。
入り口付近には多くの花が飾られていた。写真の大家、黒井史郎からも大きな花輪が届いている。
上手くやっているようで安心した。

 自動ドアが開き、良く磨かれた黒い大理石の床を踏みしめ場内を見渡した。
一面に森林や大木の写真が大小さまざまなサイズで飾られている。

「ご芳名ください」と受付の女性から声がかかるまで、森の中にいるような気分になっていた。

 一応、名前を記し写真を一つ一つ見て回る。付き合っているときは彼女を見るばかりで、こうして作品を見ることはなかったことに、今更ながら残念な気がしていた。

 写真は素人の僕が見ても素晴らしいもので、まるで深い森の苔の匂いがしてきそうだ。実物よりも、リアリティを感じる生命の波動が僕に迫る。
彼女が見てくると言った、世界一高いセコイア杉に圧倒されながら、少し休憩をするために設置されてあるソファーに座った。

 座って大きく息を吐き出し、ふと視線を上げると片隅に控えめなサイズの写真があった。――僕と若菜が愛し合った場所だ。

 二人で愛を交わした杉の木が撮られていた。僕が撮った若菜の写真はもうすでに削除してしまってあった。
こうして思い出を、公共の場所で眺めると不思議と彼女との関係は本当に過去の事なんだなあと実感する。
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