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性用占精術 秘密のセックス鑑定
第6章 バルゴの女 処女の章
 僕の胸の上の麗子が、甘い中にも威厳のあるお願いを始める。

「ねえ。星樹さん。今度観てもらいたい人がいるの」
 指先でカールされた髪を弄びながら、僕は聞き返す。

「運勢だけ?」
「ふふふ」
 きっと運勢を鑑定するだけでは済まないだろうと、予想しながら麗子の話を聞いた。

 鑑定をする相手は麗子の叔母、乙羽真澄、四十六歳独身。一カ月後に挙式を控えている。相手は五十歳で子供は三人いるらしく前妻とは死別して数年経つ。
獅童家と相手方の家との繋がりによる所謂、政略結婚のようなものではあるが、互いに承知はしており、仄かではあるが好意的らしい。

「上手くいきそうじゃないか。何を観ることがあるの? 不安があるなら、ただのマリッジブルーだよ」

「うーん。そういうことじゃなくて」

 珍しく言い辛そうにする、歯切れの悪い麗子だ。

「叔母はね、セックスの経験がないの。今は違うんだけど若いころは敬虔なクリスチャンだったし。怖いんだって……」

 相手に子供がいて跡取りを作るための結婚ではないにしろ、さすがに性生活がないとは言えない。五十代ならまだまだ現役だろう。
四十六歳で処女であるということは真澄にとって、重い足枷でしかないようだ。

「なるほどねえ。たいていの男にとって処女は結構嬉しいことだけどね……」
「それ、若い時だけでしょ?」

 ぴしゃりと言われて僕は閉口した。

「で?」
「叔母を……。自信をつけさせてほしいのよ。大丈夫だって」
「言葉だけで?」

 後ろめたそうに麗子は目を伏せて言う。

「いえ……。実践も……」

 僕は大きくため息をついて身体を起こし、掛けてあったシャツを手に取り身支度を始めた。

「まさか、僕のクィーンに他の女と寝ろと命令されるとは思わなかったね……」
「そういうんじゃないのよ。お願い。私だってあなたが他の人と抱き合うなんて絶対いやだわ。許さないわ!」

「叔母さんならいいの?」
「叔母はね。私が小さいころに母がなくなってからずっと母親代わりだったの。控えめで優しくて……自分の事をいつも後回しで。
叔母には幸せになってもらいたいのよ」

 まっすぐに僕を見つめ訴えかける麗子の目に涙が浮かんでいる。彼女にこれだけ思われる真澄は特別なのだろう。
 複雑な気分がしてはっきりした回答が出せずに「考えさせて」と一言発し、麗子のマンションを後にした。
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