この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
性用占精術 秘密のセックス鑑定
第7章 ライブラの女 バランスの章
カルチャースクールの情報通である、事務の沢井莉菜から理事長の獅童玄治郎の孫娘、獅童麗子が結婚したと聞かされた。
そこで一応形ばかりの祝儀を獅童玄治郎に渡すことにする。
「星樹君。ありがとう」
「いえ。では、これで」
「待ちなさい。君は良かったのかね?」
玄治郎は深い色の悲哀に満ちた眼差しを向けてくる。
「君は麗子と懇意だったのだろう?」
無言のまま立ち尽くしていると、玄治郎はふうっとため息を吐き出しながら窓の外を眺めて語りだした。
「残念だな。わしと蘭子の事を思い出すよ。わしは経営者として成功したかった。蘭子にも贅沢をさせてやりたかったし、もっと活躍させてやりたかった。だが……」
僕の占星術の師である紅月蘭子は探究者だった。
現実世界の、俗な物質社会にはあまり関心がなかったようで、玄治郎の望みは空回りしたようだ。
僕が知っている蘭子はいつも同じ漆黒のローブを身にまとい、少しだけ紅を引き五芒星のタスマリンのペンダントを身に着けるだけのシックな装いだった。
彼女の書斎のデスクの隅には、ガラスのケースに入った身に着けられることのない金細工の、蘭の花のブローチが飾られていた。きっと玄治郎が贈ったものであろう。
恐らく二人は全くの逆のタイプがゆえに惹かれあい、交わることが出来ずに決別したのだ。それでも愛する気持ちがなくならず、形を変え友人と言う形に落ち着いたらしい。
一度だけ蘭子の玄治郎への想いを聞いたことがある。
『彼は私が唯一自分を忘れて全てを失くしてもいいと思った男よ』
しかし彼女は自己を保った。そして彼女の持つ技術を僕ら弟子に渡し、育てることへ邁進した。
「麗子はわしの血を受け継いでいるな……。一族には縛られることなく自由に生きろと言ってきたのだがね」
「彼女は自由に生きた結果が今の状態だと思いますよ」
「そうか……」
仮に僕と一緒になって、しがない星読みの妻など麗子に合うわけがなかった。麗子と横に並ぶ自分の姿など全く想像ができない。
「麗子さんの幸せを心からお祈り申し上げます。では、これで」
「うむ。ありがとう」
理事長室から出て、少しばかり足をひきづりながらスクールを後にした。
そこで一応形ばかりの祝儀を獅童玄治郎に渡すことにする。
「星樹君。ありがとう」
「いえ。では、これで」
「待ちなさい。君は良かったのかね?」
玄治郎は深い色の悲哀に満ちた眼差しを向けてくる。
「君は麗子と懇意だったのだろう?」
無言のまま立ち尽くしていると、玄治郎はふうっとため息を吐き出しながら窓の外を眺めて語りだした。
「残念だな。わしと蘭子の事を思い出すよ。わしは経営者として成功したかった。蘭子にも贅沢をさせてやりたかったし、もっと活躍させてやりたかった。だが……」
僕の占星術の師である紅月蘭子は探究者だった。
現実世界の、俗な物質社会にはあまり関心がなかったようで、玄治郎の望みは空回りしたようだ。
僕が知っている蘭子はいつも同じ漆黒のローブを身にまとい、少しだけ紅を引き五芒星のタスマリンのペンダントを身に着けるだけのシックな装いだった。
彼女の書斎のデスクの隅には、ガラスのケースに入った身に着けられることのない金細工の、蘭の花のブローチが飾られていた。きっと玄治郎が贈ったものであろう。
恐らく二人は全くの逆のタイプがゆえに惹かれあい、交わることが出来ずに決別したのだ。それでも愛する気持ちがなくならず、形を変え友人と言う形に落ち着いたらしい。
一度だけ蘭子の玄治郎への想いを聞いたことがある。
『彼は私が唯一自分を忘れて全てを失くしてもいいと思った男よ』
しかし彼女は自己を保った。そして彼女の持つ技術を僕ら弟子に渡し、育てることへ邁進した。
「麗子はわしの血を受け継いでいるな……。一族には縛られることなく自由に生きろと言ってきたのだがね」
「彼女は自由に生きた結果が今の状態だと思いますよ」
「そうか……」
仮に僕と一緒になって、しがない星読みの妻など麗子に合うわけがなかった。麗子と横に並ぶ自分の姿など全く想像ができない。
「麗子さんの幸せを心からお祈り申し上げます。では、これで」
「うむ。ありがとう」
理事長室から出て、少しばかり足をひきづりながらスクールを後にした。