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お兄ちゃんといっしょ
第16章 第16章
私は泣いてた。
泣きながらガラス戸を開けて、サンダルを履いたまま、眠っているお兄ちゃんに駆け寄って、助けて助けて男の人が落ちちゃった、って叫びながら、必死に身体を揺さぶった。
お兄ちゃんは不機嫌そうに起き上がり、寝起きのぼさついた頭を掻きながら眼鏡をかけ、私が指差す方へのそのそ歩いていき、ベランダの下を確認して、それから「…あぁ〜」と、納得するように呟いた。
入れ墨の背中はしばし、下を向いたままだった。
「あんだけ派手に潰れてりゃ、兄ちゃんが電話しなくたって誰か通報するよ」
お兄ちゃんが身体を室内に向き直したのは、私が「救急車よんであげなきゃ」とスマホ片手に泣きながら呼びかけたときだった。
「飛び降りの現場見たって知られちゃったら最後、あとがいろいろめんどくさいから関わらないほうがいいぞ」
そう言いながらベランダのガラス戸をお兄ちゃんが締めたとき、外から女性のけたたましい悲鳴が響き渡った。
「ほらな」
お兄ちゃんは笑って、それから再び布団の上に転がった。
泣きながらガラス戸を開けて、サンダルを履いたまま、眠っているお兄ちゃんに駆け寄って、助けて助けて男の人が落ちちゃった、って叫びながら、必死に身体を揺さぶった。
お兄ちゃんは不機嫌そうに起き上がり、寝起きのぼさついた頭を掻きながら眼鏡をかけ、私が指差す方へのそのそ歩いていき、ベランダの下を確認して、それから「…あぁ〜」と、納得するように呟いた。
入れ墨の背中はしばし、下を向いたままだった。
「あんだけ派手に潰れてりゃ、兄ちゃんが電話しなくたって誰か通報するよ」
お兄ちゃんが身体を室内に向き直したのは、私が「救急車よんであげなきゃ」とスマホ片手に泣きながら呼びかけたときだった。
「飛び降りの現場見たって知られちゃったら最後、あとがいろいろめんどくさいから関わらないほうがいいぞ」
そう言いながらベランダのガラス戸をお兄ちゃんが締めたとき、外から女性のけたたましい悲鳴が響き渡った。
「ほらな」
お兄ちゃんは笑って、それから再び布団の上に転がった。