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お兄ちゃんといっしょ
第21章 第21章
お兄ちゃんが初めて振り返った。
つまらなさそうに、さぞめんどくさそうに、冷めた目で私を見つめている。
「どうせ今からお前がどこの誰だか知りたくも聞きたくもねえオヤジに抱かれた話を根掘り葉掘り聞かなきゃなんねーみたいだから、先に俺も言うけど。
俺も昨日、抱きたくもない女を抱いた」
言ってから、お兄ちゃんは後頭部をボリボリ掻いた。
言葉が出なかった。
「妊婦なんか初めて抱いたよ」
息を飲んだ私を、お兄ちゃんは笑った。
「そう、定食屋にいた元カノ。思わずアイツに電話したくなったくらい、昨日は寂しかった」
笑いながら、手招きする。
「お前が帰ってこないから。
無理だったって泣いて帰ってくると思ったのに、全然帰って来ないから。
ばあちゃんちに帰ったんだって思ったら寂しくてどうしようもなくて、だから」
駆け出してお兄ちゃんの胸に飛び込むと、お兄ちゃんは私をきつく抱き締めた。
「誰でもいいからこーしてもらいたかったんだ、奈々」
けれど。
お兄ちゃんは、私にキスしなかった。
「よく頑張ったな、根性あるよ。
兄ちゃんのために、ありがとう」
つまらなさそうに、さぞめんどくさそうに、冷めた目で私を見つめている。
「どうせ今からお前がどこの誰だか知りたくも聞きたくもねえオヤジに抱かれた話を根掘り葉掘り聞かなきゃなんねーみたいだから、先に俺も言うけど。
俺も昨日、抱きたくもない女を抱いた」
言ってから、お兄ちゃんは後頭部をボリボリ掻いた。
言葉が出なかった。
「妊婦なんか初めて抱いたよ」
息を飲んだ私を、お兄ちゃんは笑った。
「そう、定食屋にいた元カノ。思わずアイツに電話したくなったくらい、昨日は寂しかった」
笑いながら、手招きする。
「お前が帰ってこないから。
無理だったって泣いて帰ってくると思ったのに、全然帰って来ないから。
ばあちゃんちに帰ったんだって思ったら寂しくてどうしようもなくて、だから」
駆け出してお兄ちゃんの胸に飛び込むと、お兄ちゃんは私をきつく抱き締めた。
「誰でもいいからこーしてもらいたかったんだ、奈々」
けれど。
お兄ちゃんは、私にキスしなかった。
「よく頑張ったな、根性あるよ。
兄ちゃんのために、ありがとう」