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お兄ちゃんといっしょ
第23章 第23章
パパが倒れたと、お兄ちゃんのケータイに連絡があったのは、遥輝との約束の前日の晩のことだった。
「ばーちゃん?急にどーした?」
布団の上で転がりながら着信を受けたお兄ちゃんは、電話口のおばあちゃんの話を聞きながら飛び起き、立ち上がるほど、衝撃を受けているように見えた。
意外だった。
だらしない部屋着からよそ行きの洋服に着替え、車のキーを握り、出て行こうとする、お兄ちゃんが。
私も行く、と言った私をお兄ちゃんは一瞬訝しげに見つめ、それからすぐ「あ…そっか。お前の親父でもあるもんな」と思い出したかの様子で呟いたお兄ちゃんは、いつものお兄ちゃんらしかったのに。
「たぶん、だめだろうな」
夜の環状線を走りながら、お兄ちゃんは言った。
フロントミラーにぶら下がったまりもっこりが左右に揺れている。
「叔父さんが倒れたときと同じテンションだった」
お兄ちゃんは窓を少し下げると、ふかしていた煙草を外に放り捨てた。
「ばーちゃんの声が」
深くため息をついたお兄ちゃんの横顔は、ただのふつうの、息子…孫…の顔だった。
「ばーちゃん?急にどーした?」
布団の上で転がりながら着信を受けたお兄ちゃんは、電話口のおばあちゃんの話を聞きながら飛び起き、立ち上がるほど、衝撃を受けているように見えた。
意外だった。
だらしない部屋着からよそ行きの洋服に着替え、車のキーを握り、出て行こうとする、お兄ちゃんが。
私も行く、と言った私をお兄ちゃんは一瞬訝しげに見つめ、それからすぐ「あ…そっか。お前の親父でもあるもんな」と思い出したかの様子で呟いたお兄ちゃんは、いつものお兄ちゃんらしかったのに。
「たぶん、だめだろうな」
夜の環状線を走りながら、お兄ちゃんは言った。
フロントミラーにぶら下がったまりもっこりが左右に揺れている。
「叔父さんが倒れたときと同じテンションだった」
お兄ちゃんは窓を少し下げると、ふかしていた煙草を外に放り捨てた。
「ばーちゃんの声が」
深くため息をついたお兄ちゃんの横顔は、ただのふつうの、息子…孫…の顔だった。