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お兄ちゃんといっしょ
第25章 第25章
 地獄ってもしかすると、あの世でなく、この世にあるんじゃなかろうか。




 お兄ちゃんが焼き、「もっと食いなよ」と薦め続ける肉を口の中にひたすら詰め込み続ける遥輝を見て、そう思った。



 遥輝は汗だくになって一人、ひたすらお兄ちゃんが焼いた肉を食わされている。

 お腹がパンパンに張って、今にもベルトがはち切れそうだ。

 時々ウッと口を抑え…
 ジョッキ入りの水で飲み下す。
 何度もその繰り返しだ。



「ある種のしごきだよな。
 ニイちゃんたちも普段、後輩にこうやってメシ食わして体重増やさせてんだろ」



 ラストオーダーの頃、ようやくお兄ちゃんは「腹、足りた?」と意地悪く尋ねた。

 遥輝は苦しそうな顔で何度も頷き、囁くような声で「ごちそうさまっす」と言った。


 お兄ちゃんは長く長く何枚も連なった伝票を見ながら「ほぼ一人でこんだけならやっぱ、まぁまぁよく食うほうだね」と満足げに笑った。

 

 そしてそれから、



「こんだけ食って精力つけたらさぁ。
 チンコが疼いて仕方ないんじゃない?」

 

 と、唐突に言い放った。



「今夜は帰さないからね」



 私は遥輝が一瞬の間を置いて胃の中のものをすべて吐き戻すさまを、呆然と見つめるしかなかった。



 いやらしく微笑んだ、悪魔のようなお兄ちゃんの顔と、交互に。



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