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お兄ちゃんといっしょ
第26章 第26章
 国道沿いの、お城みたいなド派手な建物。
 車でカーテンをくぐるのなんて、初めてだった。 
 

「3人はここしか無理なんだよな」


 すっかり日が暮れたというのに、お兄ちゃんは何故かサングラスを取り出した。
 ダッシュボードからふたつ、お気に入りのレイバンだ。
 ウェイファーラーのブルーとブラウン。
 それはそれぞれ私と遥輝に差し出された。



「シャワーが水しか出ないけど」





 ラブホテル、という空間にはトラウマが残りそうだ、と私は直感的に思った。





「3人です」




 薄暗いエントランスに入り、お兄ちゃんがフロントに声をかける。
 フロントは小さな窓があるだけで、あとはすべて壁で覆われているから中の人の顔が見えない。

 先払いのおつりとルームキーを突き出す手は、真っ赤な長いネイルが印象的だった。



 狭い廊下がくねくねと入り組む、趣味の悪いホテル内。
 エレベーターを降りてすぐが、私達の部屋だった。



「ラブホ来んの、何回目?」



 サンダルを蹴散らすように脱ぎながら、お兄ちゃんは遥輝を振り返った。
 レイバンのレンズにお兄ちゃんの見下したような笑みが写っている。
 遥輝はまだ気分が悪いのか、


「数えたことないっす」


 と、蚊の鳴くような声で答えた。



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