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お兄ちゃんといっしょ
第5章 第5章
 車は内環状線から一般道に侵入。
 景色が繁華街から住宅地に変わっていく。
 沈黙を破るように、お兄ちゃんがうふ、と笑った。


「…でも俺、後悔したことは一度もないんだ」



 そう言ったお兄ちゃんの横顔は、笑っていた。


 
「なにひとつ後悔してない。
 失敗したこともあるけど、でも全部、やってよかったと心の底から思ってる。
 この先もやりたいことを全部やって、失敗したら失敗したなりの人生を歩むだけ」



 車は、あるマンションの前で失速。
 一階部分の駐車場にすっぽり収まった。


 エンジンを切ってから、お兄ちゃんは「なぁ」と、私に呼び掛けた。
 目が合うと、お兄ちゃんは口の端で笑った。


「兄ちゃんに会ってみて、どう」


 初めて会った日にも尋ねたことを、お兄ちゃんは再度私に尋ねた。


 試すような視線が肌を焦がす。


 自分でも気付かないうちに、私はこう口走ってしまっていた。





「…お兄ちゃんが、私のお兄ちゃんでよかったなって思った」





 一瞬の間をあけて、お兄ちゃんはあははと笑った。






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