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第18章 耿輔の誘惑 実咲の疑惑 モトミの当惑

「へー、そう言うわけかよ…。でも一向に構わないけどな。俺はモトミに忘れ物届けに来ただけだからさ。今の続きをやってくれたって全然問題ないぜ」

敵は余裕の笑みで挑発する。

「おまえ、概論のテキスト忘れたろ。家来ると必ず何か忘れるもんな。前もあったよな」

耿輔の”家に来る”というフレーズと“前もあった”に、二人同時に反応する。

モトミは『余計なことを言うなよ！』という当惑した表情。

実咲は”家に行って何の用だ”という疑惑の表情。

「わざわざ届けに来てくれなくても来週で良かったのに…」

明らかにモトミの目は苛ついている。

『今週、学祭で休講なこと分かっているくせに…』
そう言いたいのだ。

耿輔だってモトミがそう出ることくらい承知の上。

それじゃ何故って？

結局それが目的ではないから。
耿輔が届けに来たのはもっと別のモノ。

ただ、実咲の存在は計算外だったけど。