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第18章 耿輔の誘惑 実咲の疑惑 モトミの当惑

それでも、現実の呪縛に捕らえられるよりは、まだ耿輔に流される方がマシかも知れない。

互いの防衛本能が、これ以上事態に関わり合うことを阻む。

何も見なかったことにしよう…
何も無かったことにしよう…

ハッキリ言って現実逃避も甚だしいけど──

一人お気楽な耿輔の明るい声が響く。

「にしても…、すんげーキャベツだな。これどうするわけ?ザクザク刻むって、何か楽しくないか?ストレス解消になる?」

「「なる!!」」

二人同時の返事。

「マジ?!んじゃ、ちょっとだけ…」
 
その一言で残りすべてのキャベツ刻みは耿輔の仕事に決定。

作業を中断させる邪魔な存在から一転貴重な戦力へ。せめてそれくらいして貰わなければ、二人の鬱憤は収まらなかった。

斯くして耿輔はキャベツ200人分を刻み、モトミは焼きそば400人分を解し、実咲は20人分ずつ小分けにされたそれらを段ボールに詰め込んでいく。

作業は結局モトミがバイトに出掛けるギリギリまで続いた。
 
「「「ふぁーッ、疲れたぁ~」」」

全員一致の見解。ご苦労様。

この後、部屋を片して撤収する実咲と耿輔を残して、モトミはひとりバイトへ。
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