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第19章 無限後退 或いは“収束"

鍵は耿輔がバイト先に届けることになった。

バイトは午前1時まで。電車で一駅のところのレンタルビデオショップ。

道行く人の足取りがどこか軽い気がするのは、週末の金曜日だからだろうか。

忙しければ忙しいほど良かった。
寄り添って店のドアをくぐるカップルを見ると知らず溜息が出た。ついこの間までは可愛い女の子と連れだって歩くのをあんなに楽しみにしてたのに…。

あの頃は良かった。
渇いた嗤いが零れるモトミ。

“なんでこんな気持ちになんなきゃいけないんだよ!”

“なんで……なんで、よりにもよって耿輔なんだよ”

モトミの気持ちは、依然として混沌の中にあった。

眼差しは虚ろで、笑顔も少ない。

本日のモトミには人当たりのよい営業スマイルは難しかった。

それでも、いつもよりお客が多く慌ただしく時間が過ぎていくのが、せめてもの救い。

ポツポツ降り出した雨に、いつしかペーブメントはすっかり濡れている。

時計を見れば既に0時50分を回っていた。



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