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第7章 男の娘(おとこのこ) ―倒錯、或いは迷走―
(耿輔…?それとも、亨…)
”ガッチャン”、”ドサッ”、”パタパタ”
荷物を下ろす音に引き続き、慌ただしく廊下を歩く脚音。賑やかな音がひとしきり続いた後、また辺りは静かになった。
次に聞こえてきたのは、水が流れる音…調理器具がぶつかる金属音。そのうちに、何だかとても香ばしい匂いが漂ってきた。
(これってバターの匂い?)
開いたドアから、食欲をそそる香りが流れて来る。漸く腹が減ったという感覚が戻ってきたらしい。クスリの影響はかなり解消したようだ。
美味そうな匂いを嗅ぎながら、ベッドに横になっていると、幼い頃の思い出が蘇ってきた。
風邪をひいて布団にくるまる俺の耳に届く、台所からの物音。母が食事を用意してくれる音だ。まな板を叩く音、鍋を掻き混ぜる音。熱のある頭に、それらの音が子守歌のように流れ込んでくるのを聞くのが好きだった。じきにドアが開いて、温かい料理を手にした母がやって来る。