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囚われの城
第10章 「城へ戻ります」
瑠菜は痛い視線を感じながら生徒指導室へ向かう。
生きている心地がしなかった。
「失礼します」
生徒指導室には、担任と校長と教頭、そして保健の先生が勢ぞろいしていた。
瑠菜は担任に促され、椅子に座る。
「何か、困っていることはないかい?」
校長の第一声はそれだった。
瑠菜は静かに首を振る。
それから誰も話さない沈黙が続き、やがて担任が口を開いた。
「生徒の間で噂になっている話は知ってるか?」
「いえ…」
「性奴隷の屋敷があり、ある生徒がそこからうちの学校に転校してきたと。そして、その生徒が風紀を見出していると」
瑠菜は何も話さなかった。
それは、事実だから。
ここに呼ばれた時点で、自分のことを言われているのは確定なのに。
「先生方、席を外してくれないか」
「校長、しかし我々も話を聞いて現状把握と事実確認を…」
「それは個人的な興味なのでは?」
瑠菜はうつむいていた顔をあげる。
目の前に座る白髪の校長は、メガネを少しずらして、担任を見据えている。
「朝、クラスの生徒に当たり障りない忠告をした後、全員の前で彼女を呼び出したと聞きましたが」
「え、えぇ…どこか問題が?」
「明らかに個人を追及したものでしょう。本当に生徒を守ろうとする教員なら、全員に忠告した後、なるべく目立たないよう個人を呼び出せばよろしい」
「しかし…」
「自分の身勝手な興味によって生徒を追い詰めるような教師に、生徒が心を開くはずはない。どうぞ、退出してください」
校長は自ら立ち上がり、ドアを開けた。
目で教頭に合図すると、教頭が担任を引っ張って二人で出て行った。