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囚われの城
第10章 「城へ戻ります」
「あ、いえ、なんでも…」
「…?」
校長は意味深に言った。
瑠菜の反応を見て、一際大きなため息をつく。
「杉浦さん、私は桐原財閥を少し知っているんです。つい最近、この学校の生徒が急に転校し、生徒の間で噂になりました。私は個人的に桐原財閥を調べ、転校したのではなく、売られたことを知りました」
サラのことだ…。
「桐原財閥の会長とお話をしましたが、そのような事実はないと、会長はかなりお怒りでした。
桐原財閥には息子が一人います。そのご子息は専務という役で財閥に在籍していますが、フラフラと遊び回っているらしいのです」
「黎明様…桐原財閥の裏の顔として、人身売買をしていると聞きました」
「そうなんですね…」
校長は自分の持っている情報と、瑠菜の話す情報を繋ぎ合わせているようだ。
「サラさんを、助け出す方法はないのでしょうか」
保健の先生が突然口を開く。
瑠菜は桐原財閥の黎明の屋敷について、詳しいわけではない。
自分も黎明の気まぐれで解放されたようなものだ。
「サラは…私の姪なんです」
「えっ?」
「年上の男性と付き合っていると聞いてすぐ、叔父さんたち…サラの両親が離婚したり借金があったりで、サラがいなくなってしまって…本当にサラは、屋敷にいるの?」
保健の先生は今にも泣き出しそうだった。
でも、わからない。
サラは屋敷に確かにいる。
「とにかく、今日はもうこれくらいにしましょう。杉浦さんも戸惑っていると思います」
「…」
「学校としてはあなたを一般生徒と同じ扱いをします。生徒たちで出回っている噂も、なんとか根絶できるよう、教師一同で奮起します」
「はい…」
校長は瑠菜の肩をぽんぽんと叩き、教室を出て行く姿を見送った。
「父親は、何を考えているんだ…」
瑠菜がいなくなってから、校長は深いため息とともに呟いた。