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囚われの城
第10章 「城へ戻ります」
先生がいくら奮起しても、それは瑠菜にとってマイナス効果だった。
瑠菜が性奴隷の屋敷にいたという噂が本当であると言っているようなものだ。
仲の良かったユズにも無視され、紫苑からもまったく連絡がない。
この日瑠菜は、意を決して紫苑の自宅の前で紫苑の帰りを待った。
暗くなっても、ずっとそこで紫苑を待つ。
月が上がってきたとき、紫苑の姿が見えた。
瑠菜は駆け寄って紫苑に声をかける。
会いたかった人…。
「先輩、あの…」
「どこで覚えたの?」
「え?」
紫苑は穏やかな表情なのに、言葉は冷たかった。
「何人とヤッてるかわかんない性奴隷とは付き合えない。あの日、マジでひいた」
「…きた、ない…?」
「病気持ってねぇだろうな?すげー不安なんですけど」
紫苑は瑠菜の横をスルリとすり抜ける。
涙が止まらなかった。
大好きな人に拒絶されている。
立っていられず、その場に崩れた。
ーーーそれからの瑠菜は、表情のない人形のようだった。
学校へは行く。
しかし、友達と呼べる人はいない。
大好きな人も失った。
机の中にコンドームを入れられていることもあった。
心配する教師が話しかけてきても、それをネタにからこわれる。
なんのために生きているかわからない。
10月のある日、瑠菜はマンションの下に黎明の車が停まっているのを見つけた。
家に入ると、黎明がリビングのソファに座っていた。
「おう、久しぶりだな」
「ご主人様…どうして…龍さんは…」
「仕事を任せてる」
黎明は立ち上がり、瑠菜のほうへズンズンと歩いてくる。
瑠菜は後ずさったが、黎明に壁に押し付けられた。
「お前、校長に何を話した?」
「…っ」
壁に押し付けられ、上から黎明に睨みつけられる。
「あのジジィ、うちのオヤジにいろいろ言ってきやがった。めんどくせーことになってんだけど」
「ごめ、んなさいっ…」
「…」