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囚われの城
第10章 「城へ戻ります」
日向は黎明と書類の件で話し終え、泣いている瑠菜に気を止めた。
「なにかされたのですか?」
「俺のせいじゃねぇわ」
「他に誰が?」
「知らねーよ。いきなり泣いたんだよ」
「まったく…子供の扱いが苦手のようですね」
「子供って…もう中学生だろ」
「子供は子供でしょう?」
日向は瑠菜を立たせ、顔を覗き込む。
「なぜ涙を?」
日向はいつになく優しい声で瑠菜に語りかける。
背中をさすりながら、涙でぐしゃぐしゃになった頬に触れる。
日向の優しさに初めて触れ、余計に涙が止まらなくなった。
「黙っていてもわかりませんよ」
瑠菜の泣き声がこだまする。
めんどくさそうに黎明はあくびしている。
「お城にっ…戻りたい…」
「…は?」
「…なんと」
消え入るようなか細い声で、瑠菜は言った。
黎明は目を見開き、さすがの日向も眉根を寄せた。