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囚われの城
第10章 「城へ戻ります」
瑠菜は頷いた。
本当は学校へなんてもう行きたくない。
真実である噂が流れ、それについて何か言われても反論ができない。
それに大切な人。
大好きで、やっと付き合えたと思って天にも昇る気持ちだったのに拒絶された。
親友であるユズも、瑠菜を避けている。
屋敷では完全服従が鉄則だ。
しかし、それぞれに役割が与えられ、ある意味でやりがいはある。
恋愛禁止というルールがあるおかげで、紫苑の時のような気持ちの高揚はないかもしれないが、そういう意味での絶望もない。
屋敷のメイドとしての将来についてはどうなるかわからないが、瑠菜は屋敷に戻りたかった。
「11月になったら、問答無用でお前を屋敷に連れ戻す。いいな?」
「はい…」
黎明はそう言い残し、マンションを出た。
日向はそれを見送り、瑠菜に向き直る。
「今の言葉の意味はちゃんと理解したほうがいいですよ」
「意味?」
「あと半月の我慢だ、などと、楽しみにしている場合ではない、ということです」
自分が思っていたことを見透かされ、瑠菜は息を呑む。
日向もマンションを出た。
その後しばらくして龍が帰った。
黎明と交わした約束を正直に言うと、龍は怒った。
「屋敷から出られたのに、どうして戻るなんて言うの?あんな屋敷に、瑠菜ちゃん…楽しいの?」
「違うの!もうあたし、本当に辛くて…」
「学校でのこと?そもそも原因は屋敷のことじゃない!そんな場所に戻ったって、幸せなんかひとつもないよ」
「そんなの、わかってる!」
「日向に言う前にどうして俺に相談してくれなかったの?そんなに俺、信用ない?」
龍は心の底から瑠菜の味方だった。
怒りながらも、今にも泣きそうだ。
だからこそ、瑠菜の出した結論に納得いかず、二人は激しくぶつかった。