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囚われの城
第10章 「城へ戻ります」


「ごめん、俺これからちょっと仕事なんだ」

「…え?行っちゃうんですか…?」

「ごめんね。とにかく瑠菜ちゃん、ゆっくり眠りな?」


食器を洗い終えた龍は、上着を羽織った。

本当はそばにいて欲しかったけど、瑠菜はいってらっしゃいと微笑んだ。


しばらくスマホをいじったりぼーっとテレビを見たりしていた。

ちょっと横になろうかとしたそのとき、インターフォンが鳴る。


「誰だろう…」


龍が何か宅配便を頼んでいたかもしれないと思い、瑠菜は部屋着のまま玄関を開ける。

そこにいたのは、ユズだった。

瑠菜の鼓動が早くなった。

昨日のあの件…。

ユズがあたしをハメて呼び出したんだ。

扉を締めてしまいたいのに、体が固まって動けない。


「瑠菜、ごめん…先生に住所聞いて…」


瑠菜は無意識に辺りを見回した。

また騙されるかもしれない。


「今日は1人だよ」


ユズは瑠菜の気持ちを読み取ったかのように、震える細い声で言った。

あれ?

目が晴れてる。


「ごめんね、瑠菜っ!」

「…っ?!」

「あたし、本当に最低だっ…」


細いユズの腕に抱きしめられる。

ユズはボロボロと涙をこぼしながら、それでも瑠菜を強く抱きしめていた。


「あたし、ヒロト先輩と付き合えるならって、自分勝手な考えでっ…瑠菜を、あんな…」


部屋の前を、怪訝な顔をしながら近所の人が通る。

とりあえずユズを部屋に上げ、瑠菜は玄関を締めた。


「こんなことになるなんて思わなかったの…」

「…こんなことって?」

「瑠菜が…親友が、すごく辛いことになって…あたしが、勝手すぎて…」



途切れ途切れに言葉を紡ぐユズ。

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