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囚われの城
第10章 「城へ戻ります」
しかし瑠菜は、一度親友に裏切られている。
すぐに信用してまた傷つくのは嫌だ…。
その思いから、泣きじゃくるユズに何も言葉をかけることができなかった。
「あたし、瑠菜の辛さをちっとも考えてなくて…自分のことしか考えてなくて…」
ユズは自分を抱きしめる。
体は小刻みに震えている。
「辛かったよね…怖かったよね…あたしのせいでっ…」
「ユズ…もしかして…」
「…本当にごめんなさいっ」
ユズの首筋に、小さな赤い痣ができていた。
瑠菜はそれを見て気付いた。
そして、強く強く、ユズを抱きしめる。
瑠菜の目に迷いはなかった。
「大好きだったのにっ…もう怖いよ…瑠菜のこと騙してごめん…」
「…」
ユズはきっと、ヒロトに犯されたーーー
大好きで、大好き過ぎて、親友をハメてまでも近付いて。
それなのに彼の求めるものは体だけ。
深い悲しみの中で感じたのは、親友を裏切った後悔の気持ちだけだった。
「あたしのことはいいから。今でもユズはあたしの親友だよ」
瑠菜はユズが落ち着くまで、抱きしめる手を緩めなかった。