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囚われの城
第10章 「城へ戻ります」
「龍さんは…」
瑠菜が屋敷に戻りたいと言った時、龍は反対してくれた。
毎日ぶつかった。
でも、だからこそ…。
龍には言えないと思った。
「おや、不用心ですね。鍵を開けっ放しで密談なんて」
「ひゅっ!日向さんっ!」
「日向…」
どきっとして振り向くと、玄関に日向が立っていた。
まったく気付かなかった瑠菜は、会話をどこから聞かれていたかと冷や汗が流れた。
ユズも一瞬ビクッとしたが、日向という名を聞いて、表情を険しくする。
「あなたは瑠菜さんのお友達の…確か、ユズさんですね」
日向はゆっくりとユズに近付き、膝をついて座った。
何をしでかすかわからない。
瑠菜はユズを庇うようにして日向とユズの間に入る。
「私が何かするとでも?」
「いえ、別になんでも」
「ただの中学1年生には興味はありませんよ」
日向は冷たい笑みで瑠菜を見据える。
「あなたは〈ただの〉中学生ではないから面白い…」
「…どういう意味ですか?」
「あのっ!」
今にも火花が散りそうな日向と瑠菜の間に入るユズ。
緊張しているのだろう。
声が震え、裏返っている。
「瑠菜はあたしの大切な人なんです。連れていかないでください」
「ほう?連れて行く、とは?」
「屋敷にです!桐原財閥の、屋敷に瑠菜を連れて行かないで」
「なんと。人聞きの悪い。連れて行くのではなく、瑠菜さんたっての希望なのですよ」
その通りだ。
これは瑠菜が言い出したこと。
ユズがどんなに瑠菜を想い、引き止めたとしても変わらない。
「大切な友達を売って犯されたあなたに、そんなことを言う権利はないでしょう。紫苑、といったかな?」
「…っ?!」
「紫苑?」
ユズは唇を噛み締めた。
どういうこと?
ユズは、紫苑に…。
「瑠菜さんがマワされている間、ユズさんは紫苑さんに強姦されていたのですよ」