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囚われの城
第10章 「城へ戻ります」
瑠菜の目に驚きの色が浮かぶ。
それを見て、日向の口角は上がる。
「くくくっ」
瑠菜は横目でユズを見た。
今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「紫苑さんは何度も瑠菜さんの名を呼びながら、ユズさんを犯したそうですね。瑠菜さんと愛し合った時のことが忘れられなかったんでしょうね」
聞きたくない…。
今まで感じたことのない気持ちがこみ上げる。
好きな人に拒絶された。
好きだった人が親友を傷付けた。
その間、自分の名を呼んでいた。
原因を作ったのは、紫苑と繋がったあの日の自分。
事実を並べても、それに対する気持ちは表現できない。
まるで瑠菜とユズの表情を楽しむかのように、日向は笑みを漏らす。
「主を探してここに来てみましたが、留守のようなので私は失礼します」
突然現れた日向は、瑠菜とユズの心をぐちゃぐちゃにしてマンションを出た。
ユズに合わせる顔がない。
原因を作ったのは自分だから。
瑠菜はただ、床を見ることしかできなかった。
「あの人、あたしの名前知ってたし、なんであのことまで…」
「…」
「謝らなきゃいけないって思ったの。ちゃんと瑠菜に話そうって。瑠菜は正直に全部話してくれたのに、言えなくてごめん…」
「ううん、あたしのせいなの…ごめんね…」