この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
囚われの城
第10章 「城へ戻ります」
日向の情報網はすごい。
瑠菜は自分でさえ知らない自分の秘密を日向に握られている気がして、怖かった。
でも、ユズと仲直りができた。
いろんな複雑な想いはあっても、友情が戻ったことは
嬉しいことだった。
それからユズは瑠菜のことを常に気にかけている。
学校では常にそばにいるし、噂を面白がる生徒に怒ったりしてくれた。
失われた友情を取り戻しつつある。
瑠菜もユズも辛い思いをしたが、それは逆に二人を近付けた。
しかしその裏では、瑠菜が屋敷に戻るための準備がちゃくちゃくと進行していた。
黎明と日向は学校と話をつけるために動き、それを知った龍が止めに入る。
しかし非力な龍にはなにもできない。
ーーーそしてついに、10月も月末を迎えた。
マンションの下にはいつものようにユズが待っている。
制服に着替え、カバンを持つ。
「瑠菜ちゃん、俺、もう一回主に言ってみるから」
家を出る手前、龍が切なげな顔で言った。
瑠菜は知っている。
龍は黎明とあまり話さないことを。
性格が合わないのか価値観が違うのかはわからない。
でも龍は、黎明を避けている。
今回の件で龍が黎明と何度も顔を合わせ、相当なストレスを抱えていることも知っている。
胃薬、毎日飲んでた。
「もういいですよ、龍さん。最後の学校、いってきます」
泣きそうになった瑠菜は、逃げるようにマンションを出た。