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囚われの城
第10章 「城へ戻ります」
「瑠菜?どうしたの?」
「うぅん、なんでもない。行こ」
瑠菜の様子がおかしいことに気付いたユズは、おはようより先に瑠菜を心配した。
こうしてユズと学校に通うのも今日が最後…。
改めてそう思うとまた涙が出そうで、瑠菜は今日一日を大切に過ごそう!と前向きに考え直した。
学校に着くと、ユズは辺りを警戒しながらこそっと話す。
「もしかして、明日から屋敷に戻るの?」
「…」
本当は戻りたくない。
でも、やっぱりやめた、は通じない。
「席につけー。始めるぞー」
担任が話を遮る。
ユズは険しい表情のまま席についた。
今日は避難訓練があるとか、部活で怪我をしないようにとか、いつものように担任から連絡事項を発表された。
「最後に…えーと。あぁ、杉浦瑠菜!」
「えっ?はい…」
「杉浦は名門中学への編入試験に合格したため、今日が最後の登校日となった」
あぁそうか。
ご主人様と日向さんは学校にそう説明したのか。
瑠菜は特に驚くこともなく、担任の話を聞いていた。
「2カ月という短い時間だったが、友情は一生続くと思うので、新たな道を進む杉浦に…」
担任はあらかじめ用意していたかのような言葉を並べる。
そして、一時間目の授業の開始を知らせるチャイムが鳴った。
「さて、ご挨拶も終わりましたね?」