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囚われの城
第3章 屋敷のしきたり

「桐原財閥と手を組んでいるヤクザの若頭なんだって。ほら、最初に会ったでしょ?ナイフ持った怖いお兄さん」
「あ……うん、会った!」
「日向さんはかっこいいけど、すごく怖いんだよね。ご主人様もかっこいいけど、冷たいっていうか……。龍さんはかっこよくて優しいよね!」
ミカンはそう言ってはしゃいだ。
瑠菜は何も答えなかったが、心の中でミカンの言うとおりだと思った。
「龍さんがいなかったら、今頃あたしは蓄の間か、拷の間にいたんだろうな……」
「ねえ、その蓄とか拷って何?」
「知らない方がいいよ。瑠菜は、ご主人様の命令に従っていれば大丈夫……」
ミカンは掃除の手を止め、瑠菜の方を見て言った。
そのミカンの目は、とてつもなく恐ろしいものを見た後のような、曇った瞳だった。
瑠菜はそれ以上ミカンに問うことはなかった。
「終わったね」
「うん。すごくきれいになってよかった。じゃあ、ご飯にしよっか!」
応接室の掃除を終えた二人は、清々しい気持ちで部屋を出た。
「あ、あたしちょっとトイレ寄ってから行くね」
「ここからなら梅の間が一番近いよ」
「うん。先行ってて」
瑠菜は梅の間に向かう。
梅の間の前に着くと、中から声がした。
女の子の泣き声と、男の人の声……龍だ。
瑠菜はとっさに隠れ、妙に高鳴る心臓を押さえた。
「大丈夫だよ、サラ。ここにはサラを虐める奴はいない。素直に従えば、笑いながら過ごせる」
「うっうっ……いや……いやよ……」
音をたてないように瑠菜は部屋を覗いた。
中学校の制服に身を包んだ女の子がベッドに座り、龍が優しく頭を撫でていた。
それを見た瞬間、瑠菜の胸がチクッと痛んだ。
「ねぇ、龍……何であたしなの……」
「……サラの親が決めたことでしょ」
「……龍はあのときと変わらず優しいんだね」
大人びた涙を見せるサラ。
瑠菜た頭は混乱している。
龍とサラは知り合い?
龍とサラは、親しいように見える。

