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囚われの城
第5章 おもてなし
サラは相変わらず笑顔。
屋敷の秘密……そんなの誰も言ってなかった。
聞いちゃダメだ、と心が警告する。
「この屋敷で会ったことがあるのは、誰?桐原黎明と、龍と、藍沢組の日向……」
「藍沢組?」
「あの3人、不仲に見えるでしょ?」
確かに仲が悪いようには見える。
日向と黎明は確かにあまり仲が良いようには見えない。
日向と龍は一緒にいるのを見たことがないし、龍と黎明もあまり近付かない。
「本当の顔を見たことある?」
怖い……。
サラが怖い。
そこまで知らなくていい。
瑠菜は屋敷の深くまで知るのが怖かった。
知らないことが幸せということもある。
「すいません、あたしこれから、龍さんのところに行かなきゃいけなくて……」
「そうなの?」
「失礼します」
瑠菜はサラにお辞儀をして、背を向けた。
「今は、龍の部屋に行かないほうがいいよ」
「……え?」
「あなたには、まだ刺激が強すぎると思うよ」
サラが静かに言い放つ。
この人は、なんでも知っているというのか。
サラを初めて見た日、サラは龍と親密そうに話していた。
それに、キスも……。
サラは龍のことを何か知っているのだろうか。
いや、この屋敷の秘密を、全部知っているのだろうか。
サラを振り切るように部屋を出た瑠菜は、龍の部屋の前で足を止めた。
サラには止められた。
でも、瑠菜はドアをノックした。
「待ってて、ごめん!」
龍が部屋か中から叫ぶ。
その声は、穏やかな調子で瑠菜は安心した。
言われた通りにドアの前で待っていると、龍が薄く扉を開いた。
「あぁ、瑠菜ちゃん」
「龍さん。あの、聞きたいことが……」
「ごめん……あと30分で指導者が来るから、部屋で待ってて」