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囚われの城
第5章 おもてなし
どうしよう……。
屋敷に来てまだ日が浅い瑠菜は、この屋敷のことをうまく説 明できない。
マシンガントークで思いっきり動揺する京太と、恥ずかしさ で言葉が出ない瑠菜の前に……。
「おい、騒がしいな。どうしたんだよ」
「はっ!きっ、桐原さん!今日からお世話になります!大学1 年、京太です!得意科目はありません!何事も、広く浅くが モットーです!!」
「かーっ!うっせえなお前」
「えっ?だって桐原さん、この状況なんですか!僕は夢でも みているのですか!」
……黎明が眉間にしわを寄せて現れたのだ。
「あれ?面接ん時言わなかったか?」
至って冷静な黎明。
白いロングTシャツに、黒いスウェットのズボン。
頭をかきながら、自分より身長が低くてうるさい京太に向かってとぼけた。
「普通の屋敷とは違うって言われましたが、それは内装の豪華さが他よりすごいってことかと思ってましたよ!」
「なんだよそりゃ」
「だいたい瑠菜さんは中学1年生でしょう?!こんな格好させて学校にも行かせなくていいんですか?!」
「おいおい、黙って聞いてりゃ文句ばっかり……お前、もしかして童貞か?」
「むむっ……!な、何をおっしゃいますか!!」
「へえー。大学生でチェリーは今時レアだねー」
「んま、まさか!!僕だって女の子の一人や二人……って、何の話してるんすか!僕は今、この格好の!!」
「時給は5倍払うから我慢してくれ。じゃあな」
「ごごごっ5倍?!イェーイ!……じゃなくて!ちょっとお!桐原さーん!」
あくびをしながら階段を降りていく黎明。
京太は自分の中の天使と悪魔と戦っているようだ。
「あの、あたし……着替えますか?」
「……」
「……京太さん?」
「いや、そのままでいいですよ。こういうのは慣れです。僕はオトナですから、適応性があります。そう、この屋敷ではこれがふつ……ぶっ!!」
「きょ、京太さん?!」
京太は瑠菜の胸を見て鼻血を吹き出し、卒倒した。
この日、京太は最後まで瑠菜のメイド服姿に慣れることができず、大量の鼻血を吹き出し帰って行った。
瑠菜は少し嬉しかった。
京太のような明るい人間に勉強を教えてもらえること。
そして、さっき黎明と京太が話していた時、黎明が少し笑ったこと。