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囚われの城
第1章 プロローグ
「焼く、切る、千切る、殴るなど、痛いだけで発狂してもやめてもらえないSMなどですね。あとは虫や馬や犬など人間以外によるプレイ、一部のマニア層のための排泄物によるものなどです。どれも間違えれば死に至るものですが、あなたの命ひとつ搾り取って金に変えます」
「死ぬって、こと……?」
「人間には必ず死が訪れます。しかしあなたの場合は、他の人より早いかもしれませんね」
そこまで聞くと、母親は急に黙りこくった。
日向はそれを見て、口角を少しだけ上げる。
「それでは桐原財閥の専務さん、契約成立です。瑠菜ちゃんを運んでください。この方には約束の現金とパスポートを」
「承りました」
桐原財閥の専務はおもむろに荷物を取り出した。
パスポートは母親に海外へ行けということだろう。
「このキャッシュカードには借金相応額と、主より1000万が入っております。パスポートは偽造でございますので、早めに海外へ発たれることをお勧めします」
「あ、あは……あはははははははっ!」
母親はキャッシュカードとパスポートを受けとると、狂ったように笑い始めた。
毛布にくるまれた瑠菜は、今の話を全て聞いている。
日向に背中を押されると、母親の方を振り返り、一粒の涙がこぼれた。
「さよなら、ママ」
聞こえないほどの小さな声で別れを告げる瑠菜。
無理やり作った笑顔が、痛々しい。
母親は狂ったように笑いながら、焦点の定まらない目から涙を流していた。
そして今、この瞬間から、瑠菜は桐原財閥次期頭主、桐原黎明の屋敷に遣えるメイドとなった。