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囚われの城
第6章 母親の運命
翌日、出張に行っていたメイドたちが帰ってきた。
出発した時より、人数が減っている。
それに、メイドたちの表情が冴えない。
まるで地獄を見てきたかのような、暗く重い表情をして いた。
瑠菜はメイドたちをかき分けミカンを探すが、ミカンの 姿が見当たらない。
「どこ行ったんだろ……」
ミカンと出張に出掛けたメイドの姿はあるのに、本人が いない。
屋敷の隅々まで探したが、ミカンはいなかった。
「瑠菜ちゃん」
「あ、龍さん!」
龍が瑠菜を呼び止める。
昨日の件で顔を合わせにくいのだろうか。
瑠菜の目を見ず控えめな声だった。
「ミカンちゃんが帰ってないんです!それに帰って来た 人も少ないし……なにかあったんですか?」
「え?また……」
「……また?」
「あ、いや……主がもうすぐ帰るから、説明があると思 うよ。とにかく玄関ホールへ」
龍に背中を押され、瑠菜は玄関ホールへ向かった。
ぞろぞろと他のメイドも並び始めると、人数が減ったこ とが際立って感じられた。
そして、この屋敷の主、黎明の帰還。
「これで全員か?」
深くお辞儀をしているため、黎明の表情は見えない。
しかし、黎明の声はいつもより低い。
「客から連絡があった。気に入ったメイドを買い取りたいと。客が提示した金額は相場の半分以下。返還する気はないとのことだ」
買い取り?
こんなに急に?
こんなに、同時多発的に?
「この話を受け入れなければ、ウチとの取引はなしにしたいそうだ。それから、世間に公表するそうだ」
黎明は悔しそうに拳を握りしめている。
それはメイドを思ってのことなのか、それとも商品を値切られたことなのか。
それは表情からは読み取れない。
「従わざるを得ない。お前らも理解してほしい」
黎明は大きなため息をつく。
何人かのメイドが鼻をすする音がした。
「すでに3人、客の無茶苦茶な責めで命を落としている」