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囚われの城
第9章 変化する気持ち
始めて日向に会ったあの日。
母親と引き裂かれ、何もかもが変わってしまったあの日。
あの時までの、何も知らなかった自分と今の自分は、着ている服が同じでも、全然違う。
いろいろと、知ってしまったーーー。
龍と一緒にマンションに越した翌日、家具や家電が次々と運び込まれた。
その翌日には龍と一緒に鍋やらシャンプーやらを買い物にでかけた。
その翌日は龍が朝から晩まで外出し、瑠菜は買い出ししたものの片付けをした。
気がつけば、引越して一週間。
朝一番で宅配業者が荷物を置いて行った。
「瑠菜ちゃん、瑠菜ちゃん!」
龍が明るい声で瑠菜を呼ぶ。
朝食の食器を片付けていた瑠菜は、龍のいる玄関へと向かった。
「制服とカバンと教科書、届いたよ!」
「制服?」
「ジャージもあるし、運動靴もある!」
龍は真新しい制服をひょいと掲げ、嬉しそうに笑った。
自分が学生に戻ったかのように喜んでいる。
それがおもしろくて、瑠菜も笑った。
「転校の手続きは済んでるから、明日から通えるよ」
「そうなんですか?」
「友達に会うのは半年ぶりだし、楽しみでしょ?」
龍は優しく笑った。
あぁ、そうか。
いつの間にか、夏も終わりなんだ…。
春と夏を素通りしてしまったような感覚が、改めて瑠菜を包んだ。
「あと、これは俺からのプレゼント」
「え?スマートフォン?」
「今時の子は中学生でも持ってるでしょ?でも、使い過ぎはダメだよ。保護者として、怒るからね」
いたずらっぽく笑いながら、瑠菜にスマホを差し出した。