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囚われの城
第9章 変化する気持ち
「あ、紫苑先輩もういる!」
「…!」
「もう、何赤くなってんの!行くよ!」
ユズに手を引かれ、スパイクの紐を締めている紫苑のもとへ引きずられる。
ちょっと待って…。
紫苑先輩ってあんなにかっこよくなっちゃったの?
もともと顔立ちは整っていたけど、あんなに男っぽく、かっこよくなっているなんて…。
それにあたしはいつも遠くから見ていただけで、話したことなんて一度もない。
瑠菜は紫苑から目を離すことができないまま、ついに紫苑の目の前に来てしまった。
「紫苑先輩、大の紫苑先輩ファンを連れてきました!」
「ちょっと、ユズっ!」
紫苑は瑠菜を見てクスッと笑った。
「俺なんかにファンがいるなんて知らなかった」
「あ、あの…杉浦瑠菜です。あの…小学校の時から紫苑先輩のサッカーを見てて…」
瑠菜は苦しみながら言葉を繋ぐ。
大好きで仕方なかった人。
一時は忘れた恋。
でも初めて話したその瞬間、忘れていた恋心が一気に燃え上がった。
「ほら、瑠菜!スマホ出して!先輩、瑠菜と連絡先交換してあげてください!」
「あぁ…いいけど…」
ユズに促され、瑠菜はスマホを取り出して紫苑と連絡先を交換した。
憧れの人と近付けた…。
純粋な想いとは裏腹に、瑠菜の下腹部がきゅんとなった。
「ありがとうございました!」
瑠菜は連絡先を知るや否や、頭を深く下げて走って帰った。
その後ろ姿を見て、ユズはかすかに微笑んだ。