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Quattro stagioni
第3章 リングサイズ調査作戦

自慢ではないけれど、俺は異性に話しかけて嫌な顔をされた経験があまりない。もちろん、例外はいる。今ところ二人。哀しいことにその例外の内の一人が愛おしい恋人だったりする。

だが、そんな彼女も力尽くで抱き締めて額や頬にキスをすればうっとりしてくれるのでそこまで深刻ではなかった。

問題はもう一人だ。俺が声をかけようとしているのを察知してか既に嫌そうな顔をしている。同期入社の津田ミヤコ。

学生時代のアルバイト先で知り合った頃は俺が一声かけることを嫌がる子ではなかった。原因は分かっている。入社してからほぼ1年彼女にあれやこれやと頼んできた俺が悪いのだ。

「津田、あのさ、」
「無理」

夕方16時。定時まであと数時間に迫った頃、津田はよく席を立ってカフェやコンビニに行き、休憩を取る。今だ、と意を決して声をかけると容赦なく冷たい声が返ってくる。だが、ここで引き下がるわけにはいかない。

「いや、まだなにも言ってないんだけど」
「藤の顔見れば都筑さん絡みだって分かるし」
「分かってるならまじで頼みが、」
「とりあえずフラペチーノの大きいやつ買ってくれるなら聞くだけ聞く」
「そんなでかいの飲んたら太るぞ。つーか、そろそろフラペチーノ寒くない?」

季節は夏を終え、秋の序盤。ゆっくり新居を探すと言った志保さんを急かして先週末に引っ越しを終えたばかりだ。俺の発言に眉間の皺を深くした津田は手にしていた書類の束をデスクに叩きつけるように置いてからさっとスマホを掲げて俺を睨んだ。

「今まであんたが送ってきた都筑さんの観察日記メール全部都筑さんに転送しようか?」
「俺が悪かったですごめんなさい」

そんなことをされれば志保さんは間違いなく怪訝な顔をして俺が触れようとするのを嫌がるに違いない。それは、嫌だ。あの人に触れられないなんて今となっては拷問以外の何物でもない。

津田の要望通り大きいサイズのフラペチーノを買うことを了承し、連れ立ってフロアを出る。その間際、ちらりと志保さんのデスクの方を見ると険しい顔をしてPCの画面と向き合っていた。どんな顔でも彼女はかわいい。
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