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Quattro stagioni
第1章 星よりもあなたに願いを
「天の川を観に行きましょう」
藤くんの突飛な発言には慣れている。ソファーで夕食後のアイスクリームを堪能している私を無理やり自分の足の上に座らせてぎゅっと抱き締めながら言われても今更驚きはしない。
「…いいよ、暑いし。てか、下ろして」
「またそういうつれないこと言って。拗ねますよ」
拗ねるぞ、と脅すくせに彼は私を自分の足の上から下ろす気はないらしい。一口ちょうだい、とねだる彼の口元に身を捩ってスプーンを近づける。チョコバナナ味のアイスは昨晩藤くんが新商品が出ていたとたくさん買ってきてくれたのだ。
「お。これ美味しいですね」
「ね、美味しいよね」
「で、天の川いつ観に行きます?」
「行かないよ。そもそもこの辺で観られるもんなの?」
「観測におすすめの公園があるらしいです。ね、行きましょ」
すりすりと私の頬に自分のそれを寄せながら甘ったるく言う。最近、彼は私に無理強いをしたい時にこうするようになった。私が腹の底から嫌がることと、なんとなく嫌がることの区別はついているらしく、なんとなく拒んだものを実行に移したいときだけこうしてくるのはずるいと思う。
聞けば、自宅マンションの最寄駅から電車で30分ほどの移動で着く区立公園であれば綺麗に観測できるらしい。
「そんなの観なくたってこの間商店街の七夕飾りに短冊ぶら下げて来たし…それで良くない?」
「言っときますけど、俺があなたの幸せを願ったのに志保さんの短冊が『魔法のランプが欲しい』だったこと根に持ってますよ」
「……へへへ」
「まあ、そういう子供っぽいところも好きですけど。でも、そこは俺とずっと一緒に居たいとか書いて欲しかったです」
「来年はそうするね」
「期待してます」
満面の笑みである。ちゅ、と頬にキスをしてアイスをもう一口ねだる藤くんは可愛い。彼の妨害でかなりどろどろになったアイスをなんとか掬って食べさせてあげる。