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Quattro stagioni
第1章 星よりもあなたに願いを
空になったカップとスプーンを弄びながら背後の藤くんに体重を預ける。くすくすと笑って頬にキスをくれた彼はやわやわと私の脇腹を揉んで、ね、行きましょ、と囁く。天の川観測に私を連れ出すことを諦めるつもりはないらしい。
7月7日を過ぎても天候さえ良ければ初秋まで観測できるというのも厄介である。チャンスはいくらでもあるではないか。
「ねえ、もし、織姫と彦星みたいに川を挟んでばらばらにされてさ、年に1回しか会えませんって言われたらどうする?」
「そんなものは受け入れません」
「……いや、うん…えーと、そこで話終わっちゃうんだけど…真面目に働いたら年に1回ご褒美で会えるんだよ。真面目に働く?」
「真面目に働きながら橋を架けます」
「……藤くんって結構力技でくるよね」
「1年も志保さんに触れないなんて考えられませんよ。志保さんだったらどうするんですか?」
言いながら私の手の中のカップとスプーンを取り上げて、テーブルに放った。かちゃん、と金属音。速やかに体勢を変えた彼はゆっくりと私をソファーに押し倒していく。
藤くんの顔を見上げて、少し口元を突き出す。ちゅ、と啄んで頬を撫でてくれた彼はもう一度、今度は深いキスをくれる。
「……私も、橋架けるかもね」
「それか泳いで渡るっていう選択肢もありますよ」
「橋架けるのと泳ぐのだったらどっちが楽かな?」
「楽じゃなくてもあなたに会う為なら俺はなんだってやります」
「ほんと君、ぶれないね」
彼の頬へ手を伸ばした。昨日は私の真似をして風呂上りに化粧水を使ったからなのかいつも以上にしっとりしている。このままだと素肌の美しさで彼に負けかねない。それはちょっと面白くない。
頬を撫でて首へ腕を回す。ぐうっと引き寄せると彼はそのまま覆い被さってきて、私の首筋にかぷりと噛みついた。わしゃわしゃと髪を掻き撫でてやると噛みついたばかりのそこをぺろりと舐める。