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Quattro stagioni
第1章 星よりもあなたに願いを

くすぐったいよ、と身を捩っても私の反応が愉快なのか甘く噛んだり舐めたりを辞めない。仕返しに彼のうなじを擽ると、ぴくりと身体を震わせて顔を上げた。

少し伸びた前髪がだらりと垂れて影を作っていた。ゆっくりと手を伸ばしてその髪をかき上げる。キスをして、なんて言葉は必要ない。いつだって美しいアンバーを見つめれば彼の唇は私のそれとそっと重なる。

「…来週の土曜、天気良かったら行こうか」

夕方頃に家を出て、暗くなるまで散歩をしてみるのもいいかもしれない。基本的に出不精な私がこんな風に考えるようになったのは藤くんの影響を大いに受けているからだ。

私の発言で完全に上機嫌になった彼はにこりと微笑んで、さっきは噛みついた首筋に愛おしそうに口づける。

「ベッド、行こうよ」
「まじでベッドまで我慢できないです」
「藤くん最近全く我慢する素振りないよね。一昨日だってお風呂に乗り込んできたし」
「アレの時以外、我慢する必要あります?志保さんだってちょっとタイミング遅いと、しないの?みたいな顔するじゃないですか」
「……わたくし、月末1週間ほど出張ですが」
「それ、俺も一緒に行けないですかね」
「その為には早く出世してもらわないと」
「じゃ、天の川に願いましょう」
「え、天の川ってそういう意味あったっけ?初耳なんだけど」

願いを込めるのは流れ星ではなかったか。眉を顰めて首を傾げた。笑みを深くした藤くんは私の耳たぶを甘く噛むとTシャツの中へ手を滑り込ませてくる。

「ま、出世はともかく俺の願いは愛する女神が全部叶えてくれますからね」
「…ヘビーだな。全部は無理だよ、きっと」
「俺は志保さんの願いを全部叶えるつもりでいますよ」
「じゃあ、魔法のランプ作って」
「俺に頼んでくれればいいんだから魔法のランプいらないでしょ」
「お、それもそうか。じゃ、じゃあね…うーん…あ、豪華客船で世界一周旅行いきたい」
「……週明けから馬車馬のように働いて、宝くじ買いますね」

藤くんなら当てそうな気がする。楽しみ、と微笑むとちょっと私を小ばかにしたような息をついてTシャツを脱がせにかかった。本当は、魔法のランプが欲しいと書いた短冊の裏で、彼の幸福を願ったことは暫く秘密にしておこう。



Fin☆
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