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仮初めの恋人
第2章 私のフィアンセ~摂津凪子の依頼~
摂津凪子の母が倒れたのは夏の暑さも少し和らぎはじめた頃であった。
凪子は母一人子一人の母子家庭で育ち、親戚も疎遠なので肉親と呼べるのは母一人だけである。
年を重ねるごとに凪子は母に似た目元の涼しい落ち着いた美人になっていった。
しかしやはり母と同じように、どこか翳りのある顔立ちはいわゆる幸薄げであり、そのことを母は自分の過失かのように「ごめんねぇ凪子。お母さんに似ちゃって」と謝っていた。
片親だからと負い目を感じさせないように母は元々丈夫でない身体に鞭を打ち働き、凪子を大学にまで行かせてくれた。
しかしその代償として、母は身体を壊してしまった。
大学卒業後、凪子は都市部の大手商社に勤務が決まり、当然母と引っ越しするつもりでいた。
「お母さんはこの歳だから都会なんて無理無理。凪子一人で頑張ってきて」
そう言って母は引っ越しを聞き入れてくれなかった。
それが母の言い訳であることくらいは分かっている。
新しい暮らしに年老いた母と一緒だと何かと不自由があると気を遣ったのだろう、と。
凪子は母一人子一人の母子家庭で育ち、親戚も疎遠なので肉親と呼べるのは母一人だけである。
年を重ねるごとに凪子は母に似た目元の涼しい落ち着いた美人になっていった。
しかしやはり母と同じように、どこか翳りのある顔立ちはいわゆる幸薄げであり、そのことを母は自分の過失かのように「ごめんねぇ凪子。お母さんに似ちゃって」と謝っていた。
片親だからと負い目を感じさせないように母は元々丈夫でない身体に鞭を打ち働き、凪子を大学にまで行かせてくれた。
しかしその代償として、母は身体を壊してしまった。
大学卒業後、凪子は都市部の大手商社に勤務が決まり、当然母と引っ越しするつもりでいた。
「お母さんはこの歳だから都会なんて無理無理。凪子一人で頑張ってきて」
そう言って母は引っ越しを聞き入れてくれなかった。
それが母の言い訳であることくらいは分かっている。
新しい暮らしに年老いた母と一緒だと何かと不自由があると気を遣ったのだろう、と。