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仮初めの恋人
第2章 私のフィアンセ~摂津凪子の依頼~
凪子は毎月給料の半分ほども母に仕送りをしていた。

「お金なんて本当にいらないから」と本気で迷惑そうな顔をされ、余計に母の優しさを感じて電話口で密かに涙してしまったこともある。

そして凪子が都会で働き出してから八年目。
夏の終わりにその母が急に倒れたのである。

本人はなんでもないといっているが、長年の無理が祟って身体がボロボロになっていた。
医者からは「持ってあと一年です」と言われたが、覚悟していたからか自分でも驚くほどショックは少なかった。

(結局親孝行らしいことを、何もしてやれなかった……)

後悔の念で視界が滲んだ凪子は、壁に掛けられたカレンダーに目をやる。

書き込みなど何もないカレンダーには、来週の日曜日だけ赤い丸が印されていた。

この日は彼氏を連れて母の待つ実家に行く日であった。
とはいえ凪子には親に会わせる彼氏などいない。
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