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仮初めの恋人
第3章 初めての彼氏~郁野真莉の依頼~
心臓に負担をかけるほど、心拍数が跳ね上がっていた。

触れ合いは数秒で終わったが、まだ目の前に彼の顔がある気配を感じる。
また唇が重なるのかと不安混じりの期待が募るものの、その瞬間は訪れない。

彼の静かな呼吸だけを感じ、焦れったかった。

お互いに見えないという不思議な安心感と、もう一度キスをしたいという願望で、真莉は自ら顔を寄せ、餌に食いつく魚のようにちょんっと秋希の唇に触れて逃げる。

「可愛いな、真莉」

秋希が笑った気配を感じた。

後頭部を抱きかかえられ、今度は強くキスをされる。
教わったわけじゃないが、自然の摂理のように唇を開くと、その隙間から秋希の舌が入ってきた。

思わずビクッと震えたが舌同士が触れ合うと、熱に触れたメレンゲのようにふわっと身体の力が溶けて消えた。
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