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安田博の性犯罪録
第1章 女子大生・吉田さやか 1
「さやかちゃん、キスしようか。したことないでしょ?」

安田の方はさやかに親近感を覚えてなどいなかった。単純な性欲と支配欲がすべてを占めていた。
この女のすべてを独占したい。その思いがすべてを占めていた。


「はい、ないです」


さやかは答えた。正確に言えば、幼稚園児のころに無理やり近所の男の子にされたことがあった。そのことは言わないほうがいいだろう、さやかはそう思った。


「じゃあいいよね?」


キス…。さやかは、つい昨日はまでは、その言葉にある種の、夢見る少女が抱きがちな幻想を抱いていた。
しかし目の前にいるのは、自分が望むような男ではまったくなく、脂ぎった中年男性だった。
さやかは諦めていた。そして、仕方がない、と自分に言い聞かせていた。


「はい、大丈夫です」


そのセリフを聞いた安田の顔色が変わった。
そして安田はまた強く乳房を掴み出し、さらに右手でさやかの首元を掴んだ。


「大丈夫って何?」


さやかは安田の豹変に、数十分前に玄関で感じた死の恐怖の一端を感じた。
そうだ、この男に逆らわないように、この男の望むように行動しなければ、自分の生命が危ない。
さやかの脳と体は本能でそれを感じ始めていた。


「ごめんなさい、お願いします。キスしたいです」


したいです、さやかが安田に言ったのは初めてだった。
安田はそのことに言いようがない満足感を感じた。

そしてさやかの首元を掴んでいた右手をさやかの頭の後ろにもっていき
左手で強くさやかの乳首を引っ張りながら顔を近づけた。


さやかは近づいてくる安田の顔を凝視していた。
極度の近眼で、玄関ではずれたメガネをつけ直す余裕がなかったさやかは、
安田の顔がよく見えていなかった。しかしさすがにこの距離ならばはっきりと見える。
さやかは安田の顔から何故だか父親の激怒した顔を連想していた。


従わなくちゃいけない、嫌われちゃいけない…




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