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安田博の性犯罪録
第1章 女子大生・吉田さやか 1
数秒の間の後、自分が置かれた状況を理解した女は、やっと抵抗を試みる。
しかし安田は口を手で押さえたまま、女の腹に一発パンチを食らわせた。
女はウッという声を出し、怯む。その隙を逃さず女を玄関に引き倒し、馬乗りになる。
衝撃で女のメガネが飛び、床に落ちた。

「抵抗したら殺す」

安田は口を押える代わりに女のクビを圧迫しながら言った。


最初が肝心だ。ここで恐怖を植え付けて抵抗する気を失くさせる。
そうでなければ次の段階へは進めない。安田は思った。

鼻を一発殴るか?いや血まみれの女をやるのは好みじゃない。
腹に軽くもう一発、脅しの意味でパンチを入れた。
さほど痛くはなかったはずだが脅しの効果はあったようだ。
女の目が驚きから怯えへと変わった。

「抵抗したり騒いだりしたらどうなるかわかってるな?おれ、これだから」

安田はスーツの上着を脱ぎ、長そでシャツの袖をめくって、すこしかすれた入れ墨を見せる。

「お前だけじゃなくその家族も殺すからな。」


確かに遠い昔、安田は極道の世界に足を踏み入れたことはあった。
しかし生来生まれついての怠け者で礼儀知らずの安田がやっていける世界ではなかった。
上のものからのシゴキに耐えきれず、数か月で逃げ出してしまった。
入れ墨はその数か月の間に入れたものだった。
もう20年ほど前のことで、当時の色合いは完全に失っている。
しかしそれが返ってリアリティを生んでいた。
スーツを着ていればただの中年男性だが、擦れかかった入れ墨と一緒に見れば
本職の人間に見える。


安田は馬乗りになったまま、玄関に放り投げておいた自分のカバンを手繰り寄せた。
そして中から拘束用のビニールテープとタオルを取り出した。
まず女の口にタオルで猿ぐつわをする。

「そのままうつぶせになれ」

怯え切った女は黙って従った。うつぶせになった女の背中に馬乗りになり、後ろでをビニールテープでしばる。
女のすすり泣く声が聞こえたが、気にも留めず安田は作業に集中していた。
ここまで初めてとは思えない手際の良さだった。
自分には才能がある。何をやらせても駄目だった自分にこんな才能があったとは。
安田は未だかつてなく高揚していた。







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