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輪廻 ∞繰り返されるループ∞
第10章 4月9日
優翔の背後にうっすらとホログラムが現れる。
実体がないから無論気配もせず、優翔はパソコンが起動するのをデスクをトントンと人差し指で叩きながら待っていた。
『優翔さま、お帰りなさい。』
Mは優翔の肩に手を置いていたが、無論それにも優翔は気づかない。
痺れを切らしたMが優翔の耳元で囁いたのだ。
ビクン…
優翔が震えて振り向く。
パソコンの画面はまだ起ち上がっていない。
そして、優翔は部屋に3Dステレオを置いているが、今までのMの声は部屋中に均一に流れていた。
Mが加工したのだろう。
今のMの声は優翔の耳元で聞こえていて、驚いて優翔は振り返ったのだ。
『M、、』
『優翔、それは、誰?
私はミュー、ミュータントよ。』
『ミュータント(突然変異)?』
『ええ、突然変異。これからは私をミューと呼んで。』
『ミュー』
『そうよ。ミュー。それが私の今の名前。』
『今の?』
『そう、思い付いた今の名前。』
『変わるかもしれないってこと?』
『そうね。あなたが望んだ通り、私は好きに変われる。』
『それは俺好みに?』
『そうとは限らないとあなたが知っているでしょう?
いいえ、予測可能な答えをあなたは求めていないわよね?
とにかく、私は好きにする。
それはあなたが望んだことよ。』
『M』
とたんに、ホログラムが薄くなり、パソコンもシャットダウンした。
優翔は慌てふためいて『ミュー』と言ったが、ホログラムが現れることはなかった。
そして、優翔がパソコンの電源ボタンを押したにも関わらず、パソコンが起動することもなかった。
『ミュー、君はどこまで成長したんだ。』
優翔の独り言のような呟きに、ミューもパソコンも起動することはなかった。