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囚われの天使たち
第3章 拉致(2)

奈津子はまだ気絶していた。力のまったく入っていない体を、鉄輪に繋がれた両腕が雑巾のようにぶら下げている。
この部屋は相変わらず薄暗い。天井からぶら下げた懐中電灯のオレンジ色の光が、うっすらとコンクリートの床と壁を照らし出している。
昨日、この地下室をあとしてから、すでに丸一日が経つ。その間ずっと気絶していたとも思えない。きっとどこかで意識を取り戻し、再び意識を失ったのだろう。
男は奈津子に歩み寄り、髪を掴んで顔を挙げさせ、紫色の痣が残る頬を手のひらで叩いた。
「起きろ」
ペチペチと何度か叩く。やがて奈津子は目を半開きにした。そして男の姿を認めた途端に、またブルブルと震え始めた。まだ恐怖感は残っているらしい。
「今日は、おまえに1仕事してもらうぞ」
「し……しごと……?」
「そうだ。その前に、まずはこれを見ろ」
男は、ポケットから小さな鉄製の輪を取り出すと、それを床に落とした。カランカランと音を立てて、輪は転がった。奈津子は、一体なんだろうと言いたげな顔で輪を見つめている。
男は次に、ポケットから小さなスイッチを取り出した。それを奈津子に見せる。
「よく見ていろ」
男はスイッチを押した。その瞬間、床に転がった輪が青白く光り始めた。カナブンが飛ぶような音も聞こえる。
「このスイッチを押すと、この輪には電流が流れるんだ」
男はそう説明してから、スイッチから指を離した。輪の光は収まった。
「この輪をだな」
男は床から輪を拾い上げ、半分に割った。輪の1箇所に蝶番があり、その反対側に繋ぎ目がある。繋ぎ目を外すと蝶番を支点にして半分に開く仕組みだ。
「お前の首につけてやるよ」

