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囚われの天使たち
第3章 拉致(2)

あの青白い光を思い出すだけで、奈津子は身が固くなるのを感じた。あんな電撃を与えられたら、耐えられるかどうかわからない。ひょっとしたら死んでしまうかもしれない。そう考えると、この作戦は絶対に失敗できない。奈津子は、首に取り付けられている電流の流れる首輪の冷たい感触を感じながら、気を引き締めた。この首輪は、男が持っているスイッチを押すだけで電流が流れる仕組みだ。奈津子は決して男に逆らうことができなかった。

奈津子は、男の運転する車に揺られながら、緊張と不安を感じ続けていた。

やがて車は止まった。昼間なのに日の当たらない、薄暗い路地裏だ。確かにここなら、誰の目に止まることもないだろう。ここを今回の誘拐の作戦帰途として、男は決めたらしい。

「降りろ」

と男は言った。

「はい!」

と奈津子は大きな声で返事をして、無駄のない動きで車を降りた。男の命令には「はい」と返事をし、決して拒んではならない。もしそれを守らなかったら、ひどい折檻が待っているのだ。これも奈津子が守らなくてはならないことの一つだった。

路地裏からは公園が見える。夏休みに入ったらしい子どもたちが、何人か遊んでいる姿が見て取れる。男は、携帯電話で話をしている振りをしながら、目線を公園に送って、どの子供を誘拐するか物色しているようだ。

やがて、公園から何人かの子供が去っていった。正確な時刻はわからないが、もう夕方だ。日光はオレンジ色に変色し、影も長く伸びている。公演に残っているのは、女の子ふたりだった。

ひとりは、色白で、黒髪を長く伸ばした女の子だった。すらりとした綺麗な手足が、スカートと半袖から伸びている。
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