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第9章 かいとの娘リリカ（23）

「リリカとほぼ同い年の彼女やねんな。
　すぐ捨てられそうお前〜あんまり本気になるなよワラ」



　ワタシは松戸将からの、そのメッセージが目に留まったわ。



「リリカって？」



　かいとに尋ねると、かいとは表情を曇らせたわ。




「あぁ…。
　俺の娘の名前」




　ワタシが黙ってると、かいとは短い息をついて、



「岩本リリカ、見てみ。
　心配せんでも、間違いなく俺の娘や」




　と言って、ワタシが手にもってるスマホ画面を何度かタップしたわ。




　リリカのページが画面に表示された。
　



　アイコン写真は見覚えのある顔だった。
　試合のとき、ワタシの横に座ったあの母娘の、娘のほう。




　ゆりやんレトリィバァ似の、ぽっちゃりした地味な女…。




　リリカは似たような地味な女と数人連なって、笑顔でピースをしていたわ。




　そして、背景画像が、あの日の試合後に撮影したと思われる、家族3人の画像だったの。
　真ん中にかいと。
　右がリリカ。
　左が嫁よ。


　3人並んだ姿から察するに、リリカはワタシと同じ
くらいの背丈のようだった。

　仲良さげに、かいと…父親の腕に抱き着いてニッコリ笑ってた。

　きっとリリカはお父さんのことが大好きなんだわ。
　自慢のお父さん。
　カッコイイお父さん。
　だから、LINEの背景画面に設定してるのよ。


　ちなみに嫁はかいとよりも堂々とした様子で腕組みをして仁王立ち。
　男勝りな性格なんでしょうね…狭小マンコだけど…。


　

　かいとが家族3人で揃ってる姿を見たのは、これが初めてだった。



　ワタシは複雑な心境だったわ。



　あの試合の日と違ったのは、複雑な気持ちの原因が、嫉妬だってことだったんだけど…。