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霞草
第9章 無知
反対側から、カーブを抜けて街からのバスも来る。
「珍しいわね。この時間帯はここでバスが鉢合わせするのね。」
車窓越しにおばさんの声。
街からのバスがここに止まるのも珍しい。宿に来る客ぐらいしか降りないのだから…
反対側のバスが先に発車し、降りた人が見える。
霞だ。
少し早い帰りだが、
霞だった。
テストがあるから早く終わったのだろうか。
僕の乗ったバスも発車し、バス停に両親がいるのを見て、僕に気付いた霞。
霞が走っている。
僕も、おじさん達への挨拶もままならず、バスの後ろの席に急ぐ。
僕は、走る霞に手を振り、
「ごめんね。ごめんね。」
と繰り返す。
霞が、
「しゅう、黙って行かないでよ。」
と、走りながら叫んでいるのが聞こえるが、
僕は、
「ごめんね。」
と小さく言うだけ…