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霞草
第4章 出逢い
僕も「ふうん」とか「へぇー」など、気まずい沈黙を避けるだけの気のない返事をする。
でも、僕の目は、真っ白なワンピースから見えるもっと白い彼女の手や脚に釘付けだった。
僕の耳は、彼女の優しい透き通った美しい声を、一つ漏らさず聴きとるのに夢中だった。
僕の方を向いて話そうとする彼女から、柔らかく甘い香りが放たれるのを、僕の鼻はしっかりと感じていた。
一目惚れ…
そう、自分探しの旅の目的にそぐわない不謹慎な気持ちかもしれないが、彼女に好意を抱かない理由は、何一つ見つからないのだ。
僕は今まで異性を意識したことがなかった。
友達、憧れ、一方的に好意を寄せられるなどはあったが、本気で誰かを好きになることはなかったのだ。
意識し始めた途端に鼓動が早くなり、彼女の仕草にドキドキする。
それが彼女に知られてしまいそうで、平常心を保つよう自分に言い聞かせていた。
「着きました。」
彼女の声。
どこに?
あまりに彼女に夢中になっていたので、森から突然明るい開かれた場所に出たのに気づかなかった。
僕達は森を抜けて山の端の展望台のような場所にいた。