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霞草
第4章 出逢い
そして、彼女は旅行どころか、電車にすら乗ったことがないと話してくれた。
畑の手入れもあるし、
僕のように予約もせず訪れる客もいるので、家を空けたことがないというのだ。
それと、霞草を届けに行くためにバスを利用するので、
ほとんどのバスの運転手が宿の存在を知っていて、
僕のように行き当たりばったりで宿を探す客に、宿を薦めていることも知った。
陽が回り少し寒くなったので、僕達は、見晴らしのよいその場所を後にして、もと来た道を戻った。
明日はまた別のところを案内してくれると彼女は言った。
「どこを案内しても何にもない変わり映えしないところだけどね。」
と付け加えて、、
宿に戻り部屋でゴロッとなる。
霞への気持ちを考えていた。
惹かれているのははっきりしていた。
でも旅先での想い。
その気持ちを伝えてもその先どうしようもないのだ。
そして、僕は将来のことも考えなければならない。
生活の為?そもそも働くって、どういうことだろう。
いずれは、誰かと結婚して、家族を養う為に働くという理由付けはできる。