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霞草
第5章 想い
次の日も霞と出掛ける。
また別の森に入る。
そこはまだ雪が残っていた。
森の切れ間があり、雪溶け水がせせらぎを作っていた。
夏には沢になり魚も取れるということだ。
僕達が立っている雪の下も川になるのだという。
「さすがに夏まではいられないな。」
僕は残念な気持ちをそのまま隠して、事実だけを言葉にしていた。
しばらく沈黙が続く。
僕が霞を好きだという想いに間違いはなかった。
霞がどう思っているかなど、知る由もないし、いずれはここを離れる身だ。
片想いでいい。
自分のことを好きになって欲しいと思うのは、欲張りだ。
ただ、夏までは、いられない。事実を口にしてしまった。
「そうよね。」
彼女が長い沈黙を破り答える。
彼女の言葉にも残念さが込められていることに気づいたが、今の僕には、上手く答えられなかった。
僕はやるせない思いをごまかして清水に手を入れる。
「冷たい。凄く冷たいよ。霞」
彼女は、霞と呼ばれて驚いた。
でも嬉しそうな表情だった。