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霞草
第5章 想い
凍った雪の上を歩く、自然と2人手をつないで歩いた。
何も拒まない彼女の気持ち、
『離れたくない。』
この想いだけは同じなんだ。それだけでも充分だ。
これまで、人として何も成長していない僕が、これ以上望んではいけない。
突然、抱き合う姿勢になり恥ずかしさも生まれ、2人とも無言になってしまったが、繋いでいる手の温もりは2人の心を表していると感じた。
ぽつりぽつりと景色や花の名前やら、他愛もない話を見つけて話しながら森の中を歩いた。
その後、おばさんのお弁当を食べ、他の場所へと移ったりしたが、
僕は自分の話も出来ず、彼女の日常を尋ねたいのに聞けずにいた。
彼女としっかり視線が合うときっと抑えきれないだろう衝動。
それが怖くて、盗み見るように彼女を見た。
話の内容よりも彼女の表情を焼き付けていた。
日が傾いてきたので帰路につく。
歩いている間ずっと手を繋いでいた。
でも、宿の近くにくると、どちらからともなく、自然と手を離してしまった。