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霞草
第6章 二人の想い
僕は初めて会った時、霞が洗濯物に隠れてモジモジしていたことを思い出した。
「今、僕と話してても緊張してるの?」
軽い冗談のつもりで訊いてみた。
「ううん、あなたは優しいから。
話す前から、優しい人だってわかった。
ただ、部屋にこもっていると聞いていたから、心配だった。
なんとかして外の空気を吸って元気になって欲しいと必死だったかな。」
彼女は俯いて照れながら話す。
頬をほんのり赤く染めている彼女を可愛いと思い、僕は彼女に恋しているとはっきり自覚した。
その後何ヶ所か近くの観光名所を回った。
元々、街自体がカップルをターゲットに観光地として作られているので、
(恋人の…)(恋が叶う…)(永遠の愛の…)などと看板に書かれている。
恋人とは言えないが、願望のある僕は、何だか当てつけがましい看板が気になってしょうがない。
「普通のネーミングにすればいいのにね。」
思わず口にする。
景色は素敵なのだ。
彼女も、
「何だか騒々しいでしょ。」
と笑って言った。